朝起きたらおにぎりが二つテーブルに乗っていた。
二つというのがポイントだと銀時は考える。
この家に住まう人間の数は二人。つまりおにぎりと住人の数は一致している。
ということはこれ一個俺のだろ。よし。
ということで銀時はそれを食べた。ぺろりとすぐに胃袋に納めてしまう。



そしてそれは数十分後、同居人である此処の家主が起きてきたときに起こった。
起きてきたホストは目がちゃんと開いてない。ボサボサの髪をかきまぜ、さらにぐちゃぐちゃにしながら出てきた。いつもの光景だ。
「おはよー」
「………」
「?」
なんの返事もないことに銀時は首を傾げ、高杉を見た。
高杉の薄く開いた目はテーブルの上のおにぎりに注がれていた。
カサついていて閉じている唇が開く。
「…何食ってんだよ」
「は?」
寝起きは低い声がさらに低い。だがそれ以外の要因を銀時はひしひしと感じていた。
機嫌を損ねているのだこの男は。
「おにぎり」
「え?」
「食ってんじゃねぇよ!」
「うぉぉぉお!!」
高杉が蹴り上げたダイニングテーブルの椅子が銀時の方に飛んで、銀時は慌ててそれを避けた。
自分で蹴ったくせに、その痛みに高杉はさらに機嫌を悪くし、銀時に財布を投げ付けると自分はソファーにもたれ煙草に火をつけた。
深く吸った息を吐き出し言う。
「今すぐコンビニでおにぎり買ってこい。3秒以内。昆布とか買ってきたらぶっ殺すからな」
「いや無理だし」






「ということがあったわけよ。酷くね?いくら朝は機嫌が悪いとか言うんでもさ、いきなり『何食ってんだよ』とか酷くない?せめて『食っちまったのか』くらいにしてくれりゃよくね?何『食ってんじゃねーよ!』とか食っちまったよ目の前にありゃあさァ。おまけにコンビニ行くまで3分かかんのに3秒って馬鹿?どんだけ俺スーパーマン?しかもコンビニ昆布しかねぇし。聞いてんのかよ!」
「あぁうん聞いてる聞いてる。災難だったでござるな坂田氏。ドンマイでござる」
「聞いてねぇじゃねーかァァァ!!!」
銀時の絶叫が辺りに響いた。