ATTENTION!
この話は色々なんか申し訳ない感じになっております。ついでに言うとR-15。
どんな話とは言い難いので、どんな話でもオールOKバッチコイ!という方以外はブラウザをそっとお閉じください。
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最近、銀時はよく同じ夢を見る。正確に言えば、同じような夢を見る。
夢の中で銀時は高杉の身体を組み敷いていた。晒された白い首に手をかけて、その指先に力を込める。
開いた口の隙間から見える赤い舌が、色を失った苦しそうに歪められた顔とのコントラストでやけに鮮やかだったのを、目覚めた銀時ははっきりと覚えていた。

またあるときは、銀時は高杉の銀時より小さい身体を思いきり蹴り上げていた。蹲って咳込み、酸素を求めて上下する背中に何度も何度も体重をかけて足を下ろす。そう、何度も何度もだ。
赤らんだ肌が段々と色を変えていく。赤黒く、いや、青紫か。斑になってとても汚くて嫌悪感にも似た思いから銀時はさらに力を込めた。
高杉は何も言わない。やり返してもこない。ただ丸まって銀時の暴力に耐えている。
あの高杉がそんな殊勝な態度でいるなんて有り得ない。しかし有り得ている。
何故ならこれは、夢、だからだ。



「なんだその格好?」
「…うるせぇな」
学ランの上にジャージを着て、チャックを首まで閉めた高杉に銀時は問い掛けた。
確かに少し肌寒い秋だけれど、上にジャージを着込むほどでもない。
「てめぇと違って俺ァデリケートなんだよ」
「へーぇ、あっそ。でも今からんな着込んでっと、冬越せねぇんじゃね?」
「まだセーターがあるから平気だろ」
「…なるほどね」
脱ぐ気がかけらもないらしい高杉を見ながら銀時はぼんやり考え込んだ。
夢は記憶の整理だとか、深層心理の現れだとかイロイロ耳にしたことがある。
ということはつまり高杉の首を絞めたりするのが銀時の深層心理だということか。
(何、俺は実は高杉にそういうことがしたいわけか。えぇー、なんか納得いかねぇな)
誰相手ということもなく文句を垂れ流す。銀時の視線はジャージに隠れた高杉の首―――ジャージの下にそれはあるから銀時から見えているのは紫のジャージな訳だが――を見つめながら思う。
(俺は別に、高杉の命なんて、欲しくもな―――)
「んだよ」
「、なにが?」
銀時の思考は高杉の声に邪魔された。いつの間にか高杉がこちらを睨んでいた。ずっと見てたのに気づかなかった銀時は一体何を見てたのか。自分自身に内心呆れながら今度こそちゃんと高杉を見た。
「何がじゃねーよ。人のことじろじろ見やがって」
キモいから見んな。
そう言われて顔面を掴まれた。ぐいと押されて首が曲がらない方向に力を加えられる。
「いだだだだ」
「フン」
おまけだと言わんばかりに思いきり力を込められて、銀時は痛む首を押さえながら唇を尖らせてみたが高杉はもう銀時を見てはいなかった。
なんか感じろと思いながらじりじりとした視線を高杉の後頭部に注ぎ続けてみたがなんの効果もない。瞬きをして見つめるのをやめた。
一息ついて、思う。
(ほらみろ現実で高杉になんかしてみ。倍返しにされるっつの。今回なんか俺見てただけなのに痛い目みてるし)
無抵抗な高杉など、夢の中だけの存在なのだ。



目覚めては眠り、また夢を見る。
内容はエスカレートして、ある日銀時は夢のなかで高杉を抱いた。いや、抱いた、なんて生温いものではなく犯したといった方がより正確な表現だろう。
こっぴどく痛め付けた後、ぐったりとしている高杉の服を剥ぎ取って愛情などかけらも感じられないような抱き方をした。
無理に押し入った箇所は裂けて血が滴っていた。酷い貧血を起こしているらしい高杉の顔は蒼白で、夢の中で高杉は初めて抵抗した。
首にかかる銀時の手に爪をたてた。それは皮膚を裂いてぷっくりと血の線を引いた。そのとき痛みを感じたのか、目覚めた銀時は覚えていない。
覚えていないが、じくじくと痛む手を銀時は見下ろした。そこには絆創膏が貼ってある。この下には引っかき傷があることを銀時はわかっていた。猫にやられたのだ。
お腹を空かせた野良猫に、ちょっと気まぐれを起こして持っていたパンを分けてやろうとした。銀時の隙を見抜いたのだろう。猫は銀時がパンを与えるよりも先にパンを持つ手を攻撃し、落ちたパンをくわえて一目散に逃げていった。
「なにしてんだよ」
呆れたような高杉の声に、銀時は今しがた引っ掛かれた手を振りながら猫が消えた方向を見つめていた。
「パンやろうと思ったら引っ掛かれた」
「野良猫だろ。消毒しねぇとマズイんじゃねぇか?」
破傷風とか、大変だろ。そう言って高杉は一本線の入った手を取り、消毒して絆創膏を貼ってくれた。
夢の中の高杉は、最近銀時の手に怯えるようになっていた。銀時が手を、足を動かす些細な動作にも過剰に反応する。
しかし今自分の治療をしてくれている高杉は少しも怯えた様子などない。やはり夢は夢なのだと銀時は思った。
(しっかし、なんだってあんな夢見んだろうなぁ…)
1回ならまだしも何回も。銀時は眉を寄せながら3枚絆創膏が貼られた右手で寝癖だらけの髪を掻き交ぜた。



次も、また次も銀時は高杉を犯す夢を見た。
嫌だという口を塞いで痣の残る身体を無理矢理に組み敷いた。前戯なんて施したりしないので、毎回流血沙汰で真っ青な顔をしている高杉は本当に痛々しい。
けれど銀時の心が少しも痛まないのはそれが現実ではないからだ。現実だったら泣いて謝っても済まないことだと目覚めた銀時は思う。あんな高杉を前にしたら、自分は冷静ではいられないだろう。あんな目に合わせた奴に地獄を見せるくらいはするかもしれない。
確かに日頃つまらないことでいがみ合ったりはするけれど、銀時が高杉を傷付けるなんて、銀時にとって有り得ないにもほどがあることだった。
(だーからなんでこんな夢見るんだろうなぁ)
銀時は眉を寄せ、2枚絆創膏が貼られた左手で傾げた首を掻いていた。



それを銀時が目にしたのは本当に偶然だった。
今日はいつもより気温が高かった。それなのに今日も高杉は寒いからとジャージを着込み、上までチャックを締めている。
しかしどう感じても寒いわけがない、寒いわけがなかった。
暑かったのだろう。高杉がチャックを下げた。それは無意識だったのかもしれない。しかし高杉はチャックを下げたのだ。
あらわになる首に、銀時は青黒い指の跡を見た。高杉はYシャツのボタンを第3ボタンまで締めない。ジャージを着込んでいる癖に人よりもさらけ出されている肌も、肌色をしていなかった。見覚えのある色をしていた。
(…あれ…?)
どうして高杉の肌がそんな色をしているのだろう。どうしてあんなにも不自然な形に首に痣なんて作っているのだろう。どうして全て銀時がよく見知ったものなのだろう。
あれは全部夢のなかのものだろう?
「? 銀時?」
ぐるぐると渦巻く思考のなかで目の前にいるはずの高杉の声が、やけに遠くに聞こえていた。



何処からが夢で、何処からが現実? 今この瞬間俺がいるのは―――、



――― ど っ ち ?