「ただいま〜。疲れた〜もうヘロヘロだー…」 帰って来るなりそう床に沈み込んだ山本を、ヒバリはベッドの上に座り込んで読んでいた小説から目を離して、ベッドの縁まで移動して見下ろしました。 唸り声をあげながらうだうだと寝そべる山本に声を掛けます。 「ねぇ」 「あー?なんだどうしたヒバリぃ…」 山本はごろんと寝返りをうち仰向けになってヒバリを見上げます。 ヒバリは至極真面目な顔をしてじっと山本を見つめて言いました。 「僕も“バイト”したい」 「………はい?」 「ヒバリさんがバイトぉ?!」 山本の言葉に、ツナは驚きを隠せず声を上げました。 「なんでまたそんな…」 「なんでなんだろうなぁ?そっれがわかんねーんだわ。何度聞いてもヒバリ言わねーんだもん」 ヒバリはただひたすらに“バイト”したいの一点張りでその動機について一言も話さないのです。 ねぇしたいしたいしたい。ぐいぐいと山本の服を引っ張りそう訴えるヒバリに、山本は正直困っていました。 ヒバリに出来る仕事なんて、あるか? 山本は考えてみましたが、思い付かないのです。だから適当にのらりくらりとかわしているのですが、それも時間の問題。ヒバリの機嫌を損ねる前に説得して思いとどまらせたいのです。 そのためにはまず何故バイトしたいのかを知らなくては。そう考えた山本はツナと、リボーンを呼び出したのでした。 「なー小僧、協力してくれよ」 「………」 にっこりと笑いかけてきた山本に、カプチーノを飲んでいたリボーンは仕方なさそうに溜め息をつきました。 「オッさんに働けって言われたぁ?」 「って、言ってたぞ」 早速ヒバリのもとに送り込まれたリボーンは山本が知りたい情報をさっさと手に入れて報告しました。 山本の家から出たきたリボーンを夜なので山本は家に送ることにしたので歩きながらの報告です。まぁリボーンに送りなどいらないのですが。 山本はリボーンにはさっさと話すヒバリの態度の違いに胸中は複雑でしたが、リボーンの報告に耳を傾けました。 『ヒバリ、バイトしたいんだってな』 『うんそうだよ。なんかいい“バイト”知らない?山本は知らないって言うんだ。使えない男だよね』 『生憎俺も知らねぇな…。なんでバイトしたいなんて言い出したんだ?今まで一度も言い出したことなかったじゃねーか』 『…やぶ医者がね、おまえは働かねぇ手伝いもしねぇ遠慮もしねぇの完全な山本のお荷物だな。少しは働いて役にたったらどうだ。でなきゃ捨てられちまうぞ、って』 「…オッさんなんてこと言ってんだよ…」 山本は頭を抱えました。 恐らくシャマルがヒバリにそう言ったのは、この前ヒバリの食料をもらいにいった時でしょう。普段は山本一人か、ツナ達と行くのですが前回はヒバリがついてきたのです。 山本がちょっと席を外した間に、シャマルがヒバリに吹き込んだのでしょう。 山本がヒバリを捨てるなど有り得ないのに。 もしかしたら捨てられちゃうかも、という危惧から働きたいなどと言い出したヒバリに目頭が思わず熱くなりますが、今は泣いている場合ではありません。 ちょうどツナの家の前に着きました。 「ありがとな小僧」 「山本…」 リボーンが何か言おうとしましたが、山本はさっさと帰路についてしまいました。 リボーンは開きかけた口を閉じてしまいます。夜の闇に消えて行く山本の後ろ姿を見つめます。 ヒバリの言葉には、実はまだ続きが合ったのです。 『まぁおまえにはなんも出来ねーだろうけどな。明らかに社会不適合者だ。せいぜい山本の世話になんな』 『失礼だね。僕だって社会に紛れようと思えば出来るよ』 『へぇ?じゃあやってみたらどうだ?金にもなるし一石二鳥だろ』 『いいよ、やってあげるよ』 ヒバリは社会不適合者の烙印を押されて、自分の名誉のために働きたいだけだったのでした。 ヒバリは働かなくていいから。 山本が何度そう言ってもヒバリは聞きません。今度はシャマルのところに行くと言い出しました。 また余計なことを言われてはたまらないと山本はついて行くことにしました。 「仕事紹介しろ〜?ってオメェ、昼間は寝てるだ日に当たれねーだ、そうなったら夜の仕事しかねーじゃねぇか」 「夜の仕事?」 ヒバリは不思議そうにシャマルを見つめ返します。 「そ。オメェなら黙って座って愛想笑いでも振りまいてりゃ結構いい線いくんじゃね?俺がいい店紹介してやるよ」 「僕も働けるってこと?」 「そうそう。そーゆーこった」 電話電話と胸ポケットを探るシャマルとじーっとシャマルを見つめるヒバリの間に山本は割って入りました。 「ちょっ…、オッさん、何してんだよ。駄目。ヒバリが夜の仕事なんて絶対駄目」 「んだよ〜。夜の仕事はいい金になるぜ?暴れん坊主は社会勉強出来て、オメェも家計が助かって一石二鳥じゃねぇか」 「駄ー目ったら駄目。もう頼むから余計なことしねーでくれよ…。ほら、ヒバリ帰るぞ」 「僕の仕事は?」 「は?」 「僕の仕事」 「………」 明日、ツナんとこ行くか。小僧にも会えるぞ。 山本はそう言ってその場はなんとか誤魔化したのでした。 事態を打破したのは、ツナの一言でした。 「何も外で働かなくたって、家の手伝いも立派なお仕事だと思うんですけど」 「家の、手伝い?」 「はい、ほら、料理とか掃除とか。太陽光に当たらなきゃいけない洗濯とかは無理かも知れませんけど」 「………」 言われてヒバリは考え込みます。 確かに、今までそんなものに手を出したことはありませんでした。全部山本任せ。 山本はどんなに忙しくて疲れている時も一人で全部こなしていました。 「それって仕事なの?」 「仕事ですよ。人によってはお金払って人に来てもらってやってもらったりしてるんですから」 まぁお金にはなりませんけどとツナは付け足しましたが、ヒバリの耳には仕事という単語しか入ってきませんでした。 かくして、ヒバリの家事手伝いの日々が始まるのです。 朝のお手伝いその1。料理。 毎朝山本が先に起きて自分の料理の支度をして、それからヒバリの冷凍血液を解凍し、その間にヒバリを起こして一緒に朝食をとります。 ヒバリが“仕事”をするためには山本より早く起きることが第一条件です。が。 「ヒバリー、起ーきろー。朝だぞー」 山本の声にヒバリは目を覚ましました。はっ。そして気付きます。ほのかに漂うなんだかいい匂い。そう、山本の朝食はもう完成間近なのです。 「………」 「ヒバリ?」 料理、失敗。 朝のお手伝いその2、洗い物。 がちゃがちゃ盛大な音をたてて洗うヒバリに、山本はハラハラしながら後ろから見守ります。 「あ」 ガシャンと何かが割れた様な音に山本は首をすくめてから問い掛けます。 「どした?なんか割った…?」 「フライパン落としただけ。…あ」 「あ?」 「茶碗が割れてた」 フライパンの落下を受け、山本の茶碗は綺麗に割れてしまいました。 「…瞬間接着剤で直せば?」 「いや、買い直しマス…」 洗い物、失敗。 続いて行うのはごみ捨てです。朝のゴミ集積所はアパートの陰になっていてヒバリにとっても安全地帯です。 普段は山本が出かけ際に持っていくのですが今日はヒバリが持っていきます。 先週捨て損なったゴミはポリ袋一杯になっていましたがヒバリにはそんなもの軽いもんです。 カンカン音をたてて階段を下り、ぽいっとゴミを捨てたところで同じアパートの住人に出会いました。オバサンです。 「あらまぁ珍しい。山本くんのところの…えーっと」 「…ヒバリ」 「そうそう!体の方は大丈夫なの?」 ヒバリが部屋に引きこもりがち、真っ白な肌に黒ずくめ重装備の理由を、山本は太陽光に弱くて、少し病弱ってことにしたようです。 ヒバリ自身は至って健康極まりなく、薄幸めいた雰囲気を持たせたいという山本の願望が混じってないかとヒバリは思いましたが、わざわざオバちゃんには言いません。 「それにしても、本当綺麗ね〜。肌も白くて張りもあって。若いっていいわね〜」 別に若くはないんだけどな。 そう思いますがやはり言いません。吸血鬼のヒバリは軽く1世紀以上は生きています。半世紀ほど昼寝してましたが。 だらだらと続くオバちゃんの世間話にヒバリは帰りたいと思うのですが、山本に「ご近所さんに会ったらシカトしちゃダメだかんな。せめて挨拶、または会釈くらいすること」と言われています。 シカトしちゃダメ。つまり話しかけられるうちはこの場を立ち去っちゃダメと言うことだろうか。ヒバリは考えながらオバちゃんの世間話に適当な相槌をうっていました。 家にいる山本はすぐ側のゴミ集積所まで行ったヒバリがなかなか帰ってこなくて心配して出てきました。家の前からヒバリがオバちゃんにつかまっているのを見つけます。 遠目から見ても、ヒバリは無表情でしたが山本にはわかります。すごい嫌そうです。 ただでさえ人見知りの激しいヒバリ。慣れない人との長時間の会話、しかもオバちゃんの世間話などストレス以外の何物でもないでしょう。 「ヒバリ!」 山本は呼び掛けてヒバリに助け船を出します。敢えて近付きません。近付いて巻き込まれたら一環の終わりですから。 山本に気付いた二人は山本に視線を向け、その視線を受けた山本は笑いながら「おはよーございます」と小さくオバちゃんに会釈をします。 「ヒバリー、あんま外にいちゃダメだろー」 「あっ。そうよねごめんなさいね。あんまり立ち話なんてさせてたら体に障るわよね」 ぐっじょぶ病弱設定。山本の願望が思わぬところでいいように作用しました。 「にしても山本くんって男らしいわよね〜。羨ましいわ〜」 「………?」 オバちゃんの口振りにヒバリはなにか違和感を感じましたが、オバちゃんと一緒にアパートに戻ります。 「それじゃあお大事に。何かあったら言って頂戴ね。ヒバリちゃん」 「…ちゃん…?」 初めてヒバリは反応らしい反応を返しましたが、オバちゃんはさっさと家にはいっていきました。 「………」 「ヒバリー。早く戻って来いって」 「………」 階段を登り山本に手を引かれます。 「ねぇ、君ご近所さんに僕のことなんて言ったの」 「あ?なんか言われた?」 「いいから答えなよ」 「別に、肌が弱くて太陽光に当たれない少し病弱な子で身寄りもないから一緒に暮らしてるって」 「ちゃん付されたんだけど」 「…性別に関しては俺何も言ってねーよ?」 だってわざわざ男だ女だ紹介しねーだろ。ごもっともなご意見です。 「そっか…。にしてもベタだな〜」 「訂正して来てよ」 「別にいいじゃねーか。困んねーし」 「いいから訂正して来い」 ヒバリは山本を突き飛ばすと部屋の鍵を締めたのでした。 山本が出掛けて、ヒバリは普段なら布団に入り寝直すところですが今日はそんな ことしません。 お仕事しなくてはいけませんから。 そしてお布団を干すために安全な位置からカーテンを開けて寝れなくします。 くぁとあくびを噛み殺して掃除機を手にしました。 けたたましい音をたてる掃除機をガタガタさせながら記憶の中の山本を見様見真 似で掃除機をかけますが、あくびを繰り返して瞼が重たくなってきて足下がふら ふらしてきました。 「………」 かちっとスイッチを切って洗面所に向かい、顔を洗います。ですがそんなもので 目が覚めるわけもなく。 リビングに戻ると壁にもたれてすよすよと寝息をたてたのでした。 「…リー…ヒバリー、ヒバリさーん」 「ん…」 遠く名前を呼ぶ声にヒバリは目を覚ましました。 目を開ければ山本が顔を覗き込んでいました。…あれ? 「なーんでこんなとこで寝てんの」 「………今何時?」 「4時過ぎ」 「………」 気がつけば手にしていた掃除機がありません。きっと山本が出しっぱなしになっ ていたのを片付けてしまったのでしょう。 せっかく山本がいないうちにお掃除しようと思ったのに。がっかりです。 ヒバリが不満げに唇を尖らせていると山本がヒバリに笑いかけてきました。 「布団日ィ当てといてくれてありがとな〜。今日の夜はふかふかのお布団だ」 そう言ってくしゃりとヒバリの髪をかき混ぜてきたので、ヒバリは嬉しそうに笑 う山本を黙って見上げ、掃除は失敗したけど、まぁいいかと思いながらその手を 叩き落としたのでした。 夜の料理の準備です。朝は作れなかったので夜頑張ります。 その前に買い物に行かねばなりません。行ってくると言ったヒバリに山本はそれ となく俺も行くとついてきました。 ヒバリ一人に全部任せてお財布の中身全部使われてはたまりませんから。 もう日は沈み始めてはいますがまだまだ太陽の恩恵を受けている時間。愛用の日 傘を片手に二人連れ立って出掛けて行きます。 それとなくそれとなくヒバリをお買い得品へと誘導しながらお買い物です。 荷物の大半を山本に持たせ、ヒバリは山本の袋に入りきらなかったものをちょっ と持つだけ。 自分の方が力持ちなくせに「少しでも持ってあげるだけ有り難いと思いなよ」と いう認識。そんなことをしているから女の子と間違えられてしまったというのに 。ヒバリが荷物をがっつり抱えて平気な顔をしていたら勘違いなどされなかった かもしれません。 初めて握り締める包丁を持て余しながらどうやって切ったらいいんだろうと材料 を眺めます。 「手伝おうか〜?」 「いい」 「そっか」 山本は平静を装っているものの気が気じゃありません。ヒバリに食べられるもの なんて作れるのか。其処がまず問題です。 大体家事手伝いは手伝いであって、ヒバリ一人に全部まかせようなんて気は山本 にはさらさらなかったというのに。ヒバリは一人で全部こなしたいようです。 子供みたいに一人で出来るとムキになるヒバリが可愛くて可愛くて抱き締めたく て仕方ないのは事実ですか、そんなことしたら殺されるので出来ません。 「あ」 「あ?」 ヒバリが不意にあげた声に山本が台所を見ます。 「どした?」 「なんでもない」 言いながらヒバリは切っていた人参と玉葱、使っていた包丁とまな板を流しに移 して流し始めました。 「?どしたよ?」 さっき切る前に材料は洗ったはずです。山本は気になって腰を上げヒバリの手元 をひょいと覗き込みました。 「いっ…!」 ヒバリの左の親指からだくだくと血が滲んでいます。 「ちょっ…!なにしてんだ早く手当て…!」 「耳元でうるさいよ」 ヒバリの左手を取ろうとする山本の手をヒバリは煩わしそうに振り払います。 「な…」 そういう間にも傷口はみるみる塞がってかさぶたになりました。 「…思ったより深かったかな」 「………治った?」 呆然とその様子を見つめている山本にヒバリはにやりと笑いかけます。 「僕をなんだと思ってるの?」 永遠の生を約束された吸血鬼。 そのことを改めて山本は実感したのでした。 ヒバリはやけに丁寧に人参を洗っています。難しい顔をしてくんくんと匂いを嗅 いではまた洗います。 「………」 「もういいんじゃね?」 あまりにも神経質なその行為に山本はヒバリに声を掛けますが、ヒバリはやはり 難しい顔をしています。 「…この人参はもう使わない」 「?なんで?」 「僕の血が付いたから」 吸血鬼であるヒバリの血は人間の山本にとっては毒みたいなものだとヒバリは説 明しました。 血の付いたまな板と包丁も丁寧に洗い消毒までしました。 そんなこんなで料理は結局失敗。夕飯は近くのスーパーに行ってお惣菜を買って きたのでした。 「ヒバリー、ヒバリさーん。そんなに落ち込むなよ」 「…落ち込んでなんかないよ」 月が夜空を照らす絶好の散歩日和だというのにヒバリはベッドでゴロゴロ不貞寝 をしていました。 何をやってもうまくいかない。これじゃシャマルの言う通り本当にただのお荷物 だ。僕は何をやってるんだろう…。 ヒバリは現実に打ちひしがれていました。 「散歩行かねぇの?」 「…そんな気分じゃないよ」 「じゃあ俺もう寝るけど、ヒバリはどうする?」 「………」 言われてヒバリは黙って寝返りをうち山本の眠るスペースを作ってやります。そ して俯せのまま動きません。 「よっ…と。失礼しまーすよっと」 山本はヒバリを越えて開いたベッドに辿り着くと、ヒバリの横に寝そべります。 そしてポンポンとヒバリの頭を叩きました。 「明日さ、洗濯すっから。乾いたもの取り込んだら、畳むの手伝ってくんね?」 「………」 「頼むな。んじゃおやすみ」 そう言ってどさくさに紛れヒバリを抱き込んだ山本をヒバリは押し退けて距離を 取りながら、じっと山本を見つめました。 自分に出来ない家事の数々を難なくこなしていたこいつはもしかしたらすごいの かもしれない。 「………」 押し退けられ残念そうに笑いながらぐぅと眠りに落ちた山本を押し退けていた手 を離して、ヒバリは山本との距離を縮めました。 「結局ヒバリさんはどうしたの?」 『家事でも手伝えばいい』 と言い出したのは自分だったので、ツナはその後ヒバリがどうしたのか気になっ ていたのです。 「あ?んー…、いろいろ手伝ってくれてんよ」 「へぇ…、ヒバリさんがそういうのやるの、ちょっと意外」 やり始めても3日で飽きそうと思っていただけに、1週間経った今もヒバリがお 手伝いしているというのは予想外です。 「洗濯物畳んだり、曇りの日にごみ捨て行ったり買い物行ったりな。すっげ真剣 な顔してやってたんだぜ」 洗濯物なんて、最初何をどうしたらそんな風に畳めるのかと感心してしまう程め ちゃくちゃな畳み方をしたヒバリでしたが、洗濯物なら壊れることもない、さす がのヒバリも破いたりはしませんから好きなようにやらせていました。 そのうち畳み方を覚え始めて今では綺麗に畳めるようになりました。 「部屋の掃除も、気になった時やってくれるようになったしな」 「ふーん…」 あまりにも山本が嬉しそうに笑うので、なんだかツナも思わず頬が緩んでしまい ます。 「良かったね」 「ん?あぁ、オッさんに感謝しなきゃな」 「その必要はねーぞ」 突然割り込んできた声に、ツナと山本はそちらを見ました。 「どういうことだよリボーン」 「どういうもなにも、そのまんまだ。アイツは単にヒバリを夜の街に売り込んで 、あわよくば紹介料を手に入れようと思っただけだ」 「な…!」 確かにシャマルからそういう提案をなされましたが、まさか紹介料を狙ってたな んて。 「…シャマル…」 「…なんつーオッさんだよ…」 実はシャマルは最近遊び過ぎて金欠だったのです。 何とも言えない空気が流れます。 「…っと、いっけね。俺早く帰んなきゃ」 「どうかしたの?」 「今日ヒバリとタイムサービスの卵買いに行かなきゃなんねーんだ。一パック25 円お一人様3点限り」 んじゃな、と手を振り去って行った山本を見送って、ツナもリボーンと家路につ きます。 「ヒバリさんも、そんなのに行くようになったんだな〜。すごい進歩」 「前までは単なる引きこもりのワガママ姫だったのにな」 「またそういう言い方…」 「ホントのことだろ」 「…でもまぁ、動機はともあれきっかけになったシャマルには感謝してもいいか もしんないな」 「?」 不思議そうにツナを見たリボーンに、ツナは笑って言いました。 「今の山本、すっごく幸せそうだからさ」 |