散々で、最悪な人生だったと我ながら思っていた。
何処で間違った何を間違った、なんて、分かりきっていて考えるまでもない。
六道骸。
あのガキが全ての元凶だ。
あいつさえいなかったら、何度そう思ったことか。
けれどあいつを憎み、呪いながら、あいつの望むまま人を殺してあいつとして生きる日々ももう終わる。
やっと、仲間たちのもとへいける。また、笑いあったあの日々に戻れるのだ。
それだけでもう全ては輝いて見える。
今会いにいくから、待っていてくれ。ボス、みんな。
ふと、側で気配を感じた気がした。
そして、そいつは現れた。
六道骸。
昔の子供の姿のまま、なんら変わらずに。色違いのその目で覗き込んできて、笑う。
「…最期に思い出すのがおまえなんて、どこ迄散々な人生だ…」
仲間はこいつがいるせいで迎えに来てはくれないし。
いっそ此所までくると笑えてくる。大声で笑ってしまいたくなった。
が、それは出来ず押し殺した笑いが喉から滑り落ちるだけだった。
思考の世界でくらい、体のダメージなんてなくなればいいのに。
側のガキは黙り込んだまま、ずっと微笑んでいる。
その笑顔が昔の幸せだったころのままで、勘違いしそうになる。
「………」
地に放ってあった手に力を込めて、ゆるゆると持ち上げる。
頭を撫でてやろうとしたのに、手が届かなくて力尽きそうになる。
手がまた地に落ちる前に、小さな手が俺の手を掴んだ。
ガキはずっと微笑んでいる。何も言わず微笑んでいる。
俺も黙ってそのまま、俺の手を掴むその手を握り締めた。
こいつに触れるのは、何時ぶりだろう。こんな、死の淵の夢の中ででも。
見つめながら思う。
こいつをこんな風にじっと見るのは何時ぶりだろう。ボス達をこの手にかけてから、俺は骸をみていなかった、見れるはずもない。
こいつは、いつもこんな風に笑っていたのだろうか。今も、笑っているのだろうか。
側のガキは黙り込んで笑っている。笑いながら、俺の手を握り返してきた。
その仕草が、どこまでも昔のままで。
「…馬鹿だな…俺は」
大切なもの全てを奪われて、操られて。
それでもまだこいつを憎みきれない。まだ信じようとしている。愚かしい自分。それでも。


その微笑みは、幸せの証だった。